前編の続き。GPSを頼りに夫を追いかけた日の夜のことです。
しばらく何も気づいていないフリをしていよう、そしてもっと確証を掴まなければ、と思っていました。思っていたのに、気持ちが抑えきれず、つい皮肉交じりに言ってしまったんです。
“雨”が降っていた、らしい
わたし新山さんって、電車乗れないの? 電車苦手とか?
元夫なんで、そんなこと聞かれないといけないんだよ…
わたしいや、自分で帰れない理由があるから送ってあげてるのかなって。既婚者の男性の車で、女性スタッフが毎日、しかも高速で市外まで送ってもらうって、あんまり一般的じゃないじゃん?
元夫一人で帰れないとか、そんなのじゃないわ! 役所の用事が思ったより早く終わって、外に出たら雨が降ってたんだよ
わたしえ、雨降ってた? わたしも夕方そのへんにいたけど、降ってなかったよ
地雷を踏みました。
元夫降ってたんだよ!!! 俺はワイパーだって動かした!!! 人の言うことをいちいち否定するなよ!!! 俺が降ってたって言ってるんだから、疑うな!!!
物的証拠・ワイパー。気象庁を差し置いて、本日夕方の天気は夫のワイパーが確定させました。ちなみに同じ時間、同じあたりにいたわたしは無傷、完全ドライ。
元夫仕事が早く終わって、雨がポツポツ降ってて、送っても5時半には帰れると思ったから“乗ってく?”って言ったんだよ。雨の中、はいさよならーって帰せるか? “社長つめたっ”ってなるやろ。新山はめちゃくちゃ大事な人材で、辞められたら困るんだ。これは絶対しなきゃいけないことじゃないけど、俺からのサービスなんだよ
わたし電車代にちょっとプラスして渡して、“傘買ってね、今日もありがとう、気をつけて!”でよくない? それがダメな理由って何? 送ってあげた方が喜ぶの? お金の方が嬉しくない? わたしなら毎日おじさんが“送ってあげるよ”って言ってくれるより、お金もらった方が嬉しいし、怖くないし、いい人だなって思うけど。
新山さんは雨に溶けたりするのだろうか。
元夫駅はすぐそばなんだよ! そういうことじゃない!! めちゃくちゃ働いてもらって、めちゃくちゃ疲れてるんだよ! こんなに疲れてるのに電車で一人で帰すなんて、“社長つめたい”ってなるだろうが!
すぐそばの駅までも歩けないほどの重労働、サイゼとスタバ。
わたしアラフォーの既婚男性が、毎日自宅まで“送るよー”って……わたしなら怖さしかないんだけど。それが“喜ばれてる、求められてる”って思ってるのは、なんで?
元夫彼女は、昔のバイト先で疲れたときに送ってもらえるのが嬉しかった、逆に交通費を渡されて“お疲れ”ってやり方は冷たいと感じる、って言ってたんだよ。だから彼女は喜んでるし、喜ぶやり方をしてあげたいんだ
スタッフの“帰り方の好み”を完璧に即答できる社長。至れり尽くせり、恐怖のサービス業。
送迎は「必須業務」に、すり替わる話
そして夫は言い切りました。**毎日の送迎も、二人での食事も、彼女の家に通うことも、そのすべてが“業務上、必要不可欠”**なのだと。
元夫仕事に口出しされて不快なんだよ。悪影響だ。会社の70%は3年以内に潰れるんだぞ。こんなことされたら、そうなりかねない! そうなってほしいのか?!
数分前には「絶対しなきゃいけないことじゃない」と言っていた送迎は、いつのまにか「必須業務」に昇格しました。秒で改正される就業規則。
わたしなにもないなら、二人のLINEでも、なにもないってわかるもの見せてくれたらそれでいいよ
元夫嫌だ。そんなの見せる必要はない! それは一線を越えた行為だろ! 頭おかしいのかよ! もう終わりだ!
……「見せて」が、一線を越えた行為。いつも、いつのまにか「疑うわたしが悪い」にすり替わる。加害と被害がくるっと入れ替わる。
わたし一人で家に帰れる健康な成人女性をサービスで市外まで送ることより、いま限界ギリギリで過ごしてる家族のことを、優先して考えてほしかった
元夫そもそも、家事も育児も全部一人でやるって言い出したのはお前だろ!! それ、できてんのか?! 俺たちがどれだけ過酷な作業を毎日してると思ってるんだ! 大事なスタッフを家まで送るのが、そんなにおかしいのか!!
わたし既婚者の男性の車で、女性スタッフがほぼ毎日自宅まで、それも高速で市外まで送ってもらうのは、やっぱり一般的じゃないと思うよ
元夫そんなの、よくある普通のことなんだよ! 経営のことなんか何も知らないくせに! 経営者になってみろよ! そしたらわかる! 知り合いの経営者に聞いてみろ! 今すぐ電話して聞いてみろよ!
自分で参考人召喚しておいて、証人保護すな。
笑い話にしてるけど(同じような状況の人へ)
こうして書くと笑い話だし、いま思い出すとツッコミどころしかありません。でも、その渦中にいたときのわたしは、「わたしがおかしいのかな」と思わされていました。「お前が狂ってる」って何度も言われると、人はだんだん、自分の目を疑い始めます。
でも、記録を残していてよかった。あとから冷静な状態で読み返すと、はっきりわかります。おかしいのは、わたしの感覚じゃない。話をすり替えて相手を悪者にする、証拠は見せない、「お前が狂ってる」で終わらせる——あとで知ったのですが、モラハラやガスライティングと呼ばれる、典型的なパターンなのだそうです。
もしいま、あなたが「自分がおかしいのかも」と思わされているなら。その違和感は、たぶん合っています。 当時のわたしみたいに一人で抱え込まないで、早めに専門家——弁護士や、カウンセリング、DV相談の窓口——を頼ってください。適切な第三者に話すことで、「やっぱり、おかしいのは自分じゃなかった」と気付くことができます。当時のわたしに一番必要だったものかもしれません。
次の記事では、この後——「もっと飲め」と安定剤を差し出された夜と、わたしがついに彼女と対面した日のことを書きます。