サレ妻大離婚記 第9話

実録

オフにされたGPS

前回、「感謝が足りない」で終わった夜。その翌日、5月19日の昼のことです。

「今日、新山さんは?」「いない」

この日も夫は朝から出かけていました。お昼前、電話でこんなやりとりをしています。

わたし
今日、新山さんは?
元夫
いない
わたし
そうなんだ
元夫
あ、でもあとで合流する。自宅に機材を取りに行くし

それは「いない」じゃなく「いる」だね。

わたしは「そうなんだ、大変だね。お疲れ様、気をつけてね」と返しました。ここで追及しても意味がないからです。

GPSが、ふっと消えた

GPSの動きを確認していると、彼女の住むO市に入ったあたりで位置情報がふっと消えました

オフにされた。

11時37分、もう一度電話をかけました。54秒の通話です。

わたし
今見たら、GPSがオフになってたよ
元夫
あ、ほんと?
わたし
オンにしといてねー
元夫
わかった

電話を切った直後、位置情報が復活しました。表示された点は、やはり彼女の家の方面へ向かっていました。

11時42分着信、1時間6分の通話。

そのまままっすぐ彼女の家には向かいませんでした。点は彼女の家のすぐ近くの駅で停止し、今度は夫のほうから電話をかけてきました。この電話が、1時間6分。——あれだけ「激務だ」「休む暇もない」と言っていた人が、平日の昼間に、1時間以上こじつけの逆ギレをかましてきます。

元夫
GPSでずっと監視されてる中で新山の家に行ったら、新山の家も知られて、個人情報が大変なこのご時世に情報が漏れたりしたら責任取れるわけ?!
元夫
気持ち悪すぎる!!! お前は一線を越えた!!! 狂ってるよ!!! もう終わりだ!!!

GPSの共有に「いいよ」と言ったのは、夫本人です。連絡がつかない時もあるから居場所を確認して、と言ったのも夫でした。

それを見たら、なぜかこちらが「一線を越えた」ことになる。

夫が**「送迎はしない」と言った翌日に彼女の家へ**向かったりしなければ、確認する必要などないのですが…。それを「GPSを見たお前が悪い」にすり替えて怒鳴る——自分の非を、相手の非で塗りつぶす。夫の常套手段でした。

言い訳は、3回変わった

わたしは、こじつけで怒鳴り続ける夫に落ち着くよう繰り返し伝えて、ひとつだけ質問しました。

わたし
わかったから、落ち着いて。質問に答えて。さっきO市に入ってから、GPSを故意にオフにしたよね?

返ってきた答えは、こうです。

元夫
そんなことしてない! 大事な会議の前に、音をオフにしたんだよ!!

位置情報アプリに「音だけオフ」という設定は、ありません。

そして最終的には、こう着地しました。

元夫
O市に差し掛かった時、アプリは開いてた。けど故意には切ってない。手が当たって切れたんじゃないの

「してない」→「音をオフにした」→「手が当たって切れた」。 1本の電話の中で、言い訳が3回変わりました。

わたしは夫から、嘘の見分け方を学びました。本当のことは、言い直す必要がない。

わたしは、会いに行くことにした

ひととおり嵐が過ぎたあと、わたしは静かに聞きました。

わたし
今からどうするの?
元夫
彼女の家に機材を取りに行って、それから事務所で作業する
わたし
彼女も一緒に?
元夫
一緒

一時間怒鳴ったあとに、しれっと「彼女も一緒」。驚きもありません。

そして、わたしはこう伝えました。

わたし
じゃあ今日、差し入れを持って挨拶しに行くね。休みなく、無償で働いてくれてる方に、夫がお世話になってますって御礼を言いたいから

夫は、あからさまに渋りました。

元夫
今すぐ事務所に行くわけじゃないから、何時になるかわからない
わたし
わたしも午後は用事があるから、夕方に行く
元夫
……わかった。来ていいよ

こうして、わたしは彼女に会いに行くことになりました。

わたしが次に選んだのは、会って、この目で確かめることでした。

話をそらされる、ということ(同じような状況の人へ)

実は、この日のやりとりは、夫と揉めるときの常套パターンでした。

まず、自分が承諾したはずのことを、こちらの非にしてくる。 GPSを確認していいと言ったのは夫なのに、見た瞬間わたしが加害者に。論点をすり替えて、怒鳴って、こちらを黙らせる。渦中にいると、本当に「わたしが悪いのかな」と思わされます。

それから、言い分が何度も変わる。 本当のことは、言い直す必要がありません。自分に都合よくその場しのぎの嘘を重ねていると、必ずほころびが出ます。でも、それが真実を掴むきっかけになるかもしれません。

わたしが心がけていたことは、感情でぶつかってくる相手に感情で返さないこと。あの1時間6分の電話でわたしがしていたのは、言い返すことではなく、冷静に応対し、そして録音し記録を残すことでした。

夫がGPSを承諾したことも、GPSを見たことを責めてきたことも、夫の言い分が3回変わったやりとりも、わたしはすべて録音していました。その場で完璧に記録する必要などありません。録音さえ残しておけば、落ち着いてから書き起こせます。——実際わたしがこれらを書き起こしたのは、しばらく経ってからのこと。あなたが浴びせられている言葉も、いつか同じように、あなたを守る武器になるかもしれません。

次回、いよいよ、わたしは彼女と会います。ドアの向こうで待っていたのは、想像と少し違う光景でした。

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