サレ妻大離婚記 第12話
実録30分だけ

前回、嘘が少しずつ綻びはじめた話し合い。子どもがぐずって一度中断し、寝かしつけのあと、夫からの「30分だけ」という約束で再開しました。わたしはまだ、この家をやり直したいと思っていました。
この30分は、わたしの人生でいちばん長い夜になりました。
「俺の魂が、そう感じる」
わたしは、これからのことを聞きました。


信頼を回復する必要があるのはわたしなのか?


魂。

わたしは、まだ“家族”を諦めないために話していました。
子どもを、名前で呼ばなかった
疑ってしまうのには、積み重ねがあります。わたしはそれを、わかってほしかった。



新山さんの前で“家族”を匂わせたくなかったんだろう。——そうとしか捉えられない



「30分って、俺から言うこと?」
言いかけた、そのときでした。

わたしは時計を見ていませんでした。







涙が、勝手に溢れてきました。

「薬、もう少し飲んだら?」
息が、うまく吸えなくなりました。



用量以上に飲んではいけない、と言われている薬でした。



過呼吸になりながら、わたしは袋を探していました。
しばらくして、少しずつ息が戻ってきて、わたしはただ、繰り返していました。「ごめんなさい。」と。
「ジャストアドバイス」
落ち着きかけたわたしに、夫はもう一度言いました。











飲もうとした、その瞬間でした。


過呼吸で苦しむ相手に、飲むなと言われている薬を「もう少し飲んだら」とすすめる。飲もうとすれば「医者じゃない」「決めるのは自分」。——何が起きても、自分だけは悪くないようにする。「ジャストアドバイス」。この言葉は忘れることができません。


冷静に話したくて、わたしは処方された安定剤を飲んでいました。この人と、ちゃんと話すために。
脅し、というブーメラン





そして夫は、静かにこう言いました。

沈黙が、部屋に降りました。
何言ってんの?意味が分からない。
「一線を、越えた」
動悸がして、気持ちが悪くなりました。それなのに、わたしはなぜか、この人に感謝していました。

そう言いながら涙が止まらなくなって、そのあと、ふっと涙が止まって、今度は気分が高揚してきました。今ならわかります。あれは、心が壊れる寸前の、解離だったのだと思います。






その言葉を聞いて、わたしの口から出たのは、これでした。


わたしは、笑っていました。泣きながら、笑っていました。

産後に不安定なのも、薬を飲んでいるのも、誰のせいだよ。


わたしは、なおもLINEを見せてと言い続けました。二人が本当はどういう関係なのか、どうしても確かめたかった。




崩れて、笑って、泣いて、「離婚だ」と叫ぶわたしを——この人は、カメラに収めようとしていました。保身のために。
壊れていい場所を、間違えないで(同じような状況の人へ)
この夜のことを、わたしは身近な人に、親や親友にさえも、いまだに詳細に話したことはありません。いまもなお自分の中で消化しきれていないし、この時のことを思い出そうとすると胸が張り裂けそうになります。
この夜の夫のふるまいには名前があります。相手を否定し、混乱させ、「おかしいのはあなたのほうだ」と思い込ませていくこと。ガスライティング、モラルハラスメント、精神的なDV、と呼ばれるものです。 飲むなと言われている薬を「もう少し飲んだら」とすすめ、飲もうとすれば「決めるのは自分」と手を引く。これは、アドバイスではありません。
もしあなたが今、「おかしいのは自分のほうかもしれない」と一日に何度も思わされているなら。その“思わされている”感覚こそが、サインです。あなたの神経がおかしいのではありません。
- 薬を無理にすすめられる、量を勝手に足すよう言われる——これは危険です。用量は必ず主治医の指示に従ってください。
- 心療内科・精神科、そして配偶者暴力相談支援センター(DV相談ナビ=短縮ダイヤル #8008)は、無料で相談できます。
- その場のやりとりを、記録に残してください。録音でも、日記でも。あとのあなたを守る、いちばん確かな味方になります。
わたしは、この夜のことをすべて録音していました。壊れそうな自分を守るために。それが後で、どれほど自分を助けることになるか——このときは、まだ知りませんでした。
そしてこの直後、わたしは家を出て、行き先もなく夜道をさまよいます。
次回、夜道でうずくまっていたわたしを見つけたのは、警察の方でした。