サレ妻大離婚記 第19話
実録完璧なアリバイ

前回、県外の実家から夫の様子を追っていた話を書きました。
夫の位置情報は、別居後も生きていました。やましいことはないから、それでメイの気が済むなら好きなだけ確認すればいい、と、夫が共有をオンにしたままにしていたからです。
別居して数日後のことです。夫は、夫の両親から「一連の説明をしに来るように」と、実家へ呼ばれていると言っていました。
一日の軌跡
わたしは朝から夫の位置情報を見ていました。
午前中にいちど、位置情報が切れました。数時間後、またONに。お昼すぎに夫の実家のあたりに一時間半ほど。ここまでは、聞いていた話と合っています。
夕方から、夫は街なかの一点に一時間ほど留まりました。そのあとはとんかつ屋に移動して小一時間。それから、普段行くこともない地域の墓地の駐車場へ。そこで、また一時間近く。
——あとで領収書を見て知るのですが、そのとんかつ屋の伝票は、予想通り2名利用でした。
電話
夜、わたしは夫に電話をかけました。
まず、実家には行ったのか。行った、と言います。どんな話をしたのか。「現状報告」「ありのまま」。
そして、こう続けました。







わたしは、その日の軌跡をぜんぶ見ていました。だから尋ねました。


どんな脅しだよ。
そして夫は、言ってしまいました。

——アリバイ。やましいことがない人は、そもそもその単語を使わない。
もう会っていないはずの相手の今日のアリバイを、なぜあなたが準備しているのだろう。


何らかのパーツ












何らかのパーツを受け取るのに、墓地の駐車場で一時間。
「協力してもらってる」
ここから、夫の話はどんどん大きくなっていきました。
自分は何人もの友達に今の状況を話して、協力してもらっている。 監視されていて家には来られないから、こうして違う場所まで来てもらっている。 行動を見られているのがわかっていたから、今日はわざと、いつもと違う場所を回った。 そうしたら案の定これだ。ほんとうに気持ち悪い——。
わたしが見ていたのは、位置情報が示す点と、時刻。それだけです。それを尋ねただけで、こんなに言い訳がましく不審な説明が返ってくる。
ついでに、さっきのとんかつ屋も。一時間ひとりでとんかつを食べていたことになっていましたが、それも途中で「友達と食べていた」に変わりました。急に、友達が大量に現れます。
そもそもあなたほとんど友達いないでしょ。
「訴えてやる」
そして最後は、いつものところに着地しました。

自分の一日の行き先を尋ねられただけで、妻を訴える、精神鑑定させる、という話になる。
その夜、ひらいたアプリ
電話を切ったあと。
その日の夜遅く、夫は、三か月以上ひらいていなかった、子ども写真共有アプリにログインしていました。
訴える、鑑定させる、と言った、その数時間後に。
この人は今「ちゃんとした父親」のアリバイを作ってるんだな。そう感じました。
位置情報も、会話も、記録になる(同じような状況の人へ)
この日のやりとりもすべて録音していて、書き起こしました。位置情報の時刻、電話で言われたこと、届いたメッセージ。そのときはただ必死でした。でも、こうした日付のある記録が、あとになってわたしを助けてくれました。
問い詰めても言い逃れと逆ギレが返ってくるだけの相手がいます。そういうとき、あなたを守るのは、言い合いに勝つことではなく、冷静に残した事実のほうです。
このあと、夫の言う“友達”の話は、思わぬ形で裏付けが取れることになります。次回、遠い街での話です。