サレ妻大離婚記 第18話

実録

音を聴いた

前回まで、別居のあとの夫とのやりとりを書いてきました。

そんな中、わたしはある方法で証拠集めを進めていました。正直、とても大きな声では言えないような方法です。

確かめようがないはずだった

ETCも位置情報も領収書も、事実は少しずつですが積み上がっていました。でも、それだけでは全然足りませんでした。

玄関に置かれていた新山さんの自転車を見て以来、わたしは、あの家の中で何が起きているのかを知る必要があると思っていました。

でも、県外の実家に帰っているわたしには、確かめようがない。……はずでした。

仕掛けて、気づかれて

ある時、気づきました。県外にいながら、あの家の様子を“聴ける”方法を。特別な機械は使っていません。ペットモニター兼ベビーモニターとして使っていたタブレットの設定を少しいじって、見えないところに置いただけです。

別居から5日後、改めて荷物を取りに立ち寄ったとき、それを、そっと仕掛けました。そして何食わぬ顔で家を出ました。

これで、真実を手に入れられると思っていました。しかし、そう思ったのも束の間、その夜突然通信が途絶えてしまいました。

電源が切れてしまったか、アプリの不具合か、はたまた…。せっかく有力な情報源を得たと思ったのに、かなり落ち込みました。

次に自宅に立ち寄ったのは、その約10日後。夫には何も言わずに行きました。部屋は見たことがないくらい荒れていて、そして仕掛けたタブレットは、無造作に引き抜かれて置かれていました。

バレてた。

けれど、この時点で夫は、タブレットに関することは一切、わたしに言ってきていない。

スマホに触ろうとすれば「警察を呼ぶぞ」、気に入らなければ「訴えてやる」。そういう人です。見つけたなら、烈火のごとく責め立てるはず。盗聴だ、犯罪だ、と。

でも、そうせずに、黙ってアプリだけ切っていた。

この沈黙こそが、答えです。別居後この家で、わたしに聴かれては困る何かがあった。皮肉なことに、夫自身のその反応が、まだ何ひとつ聴けていなかったわたしに答えを教えてくれたのでした。

裏をかく

普通なら、ここで諦めるかもしれません。バレたのだから。

でも、わたしは諦めませんでした。

同様の機能の別のアプリを入れて作動させ、同じ場所に――タブレットを夫が無造作に放り出していた姿そのままに戻したのです。誰も、何も触っていないかのように。そして、訪れた痕跡を残さずに家を出ました。

我ながら、少しおかしかったと思います。でも、そのときのわたしにはこれしかありませんでした。

取り憑かれていく

そこからのわたしは、位置情報アプリとイヤフォンを、片時も手放せなくなりました。

位置情報で夫が家にいる時間を把握し、夫が出かけるまで、そして夫が帰宅してから物音がしなくなるまで、ずっとイヤフォンで遠くの家の物音に耳を澄ませていました。子どもの世話をしながら、家事をしながら。そして証拠になりそうな音が聞こえたら、すかさず録音する。

子どもを寝かしつけたあとが、本番でした。その日録れたものを、夜通しパソコンに向かって、ひとつずつ文字に起こしていく。当時はAIなんて便利なものはなかったので、全て手作業でした。同じところを何度も再生しては、一晩中書き起こし続けました。

気づけば、ほとんど眠らない日が続いていました。何としても、確かなものを掴みたい。その一心で、わたしは記録に取り憑かれていきました。

事実だけが、味方だった(同じような状況の人へ)

崩れそうなわたしを支えていたのは、“やるべきこと”の存在、それに没頭している時間、そして、そこから確かに積み上がっていく事実。それだけが、わたしの味方でした。

ただ、正直に言えばこれはおすすめできるやり方ではありません。心も体も、確実に削れます。それに、やり方によっては、法に触れてしまうこともあります。どうか真似はしないでください。同じように追い詰められている人がいるなら、ひとりでそこまで背負い込まないでほしいと思います。

こうして積み上げた事実が、後にわたしを助けることになります。 少しずつ書いていきます。

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